『起業家としての国家』
マリアナ・マッツカート著
『企業家としての国家 -イノベーション力で官は民に劣るという神話-』
を読了し、従来の経済学の常識を覆す、国家の新たな役割に深く感銘を受けました。
本書では、イノベーションは必ずしも民間企業が独占的に生み出すものではなく、
国家がリスクを負い、積極的に投資することで、より大きなイノベーションが生まれると主張されています。
特に、
インターネットや人工知能など、現代社会を支える基盤技術の多くは、
国家の研究開発投資や政策によって育まれたという事実には、
目を見張る思いがしました。
従来の経済学では、市場の自由な競争がイノベーションを促進するという考えが主流でした。
しかし、マッツカート氏は、市場には見えにくい外部性や不確実性があり、
民間企業だけでは解決できない課題が存在すると指摘します。
国家は、こうした市場の失敗を補完し、
長期的な視点でイノベーションを促進する役割を担うべきだと主張しているのです。
本書を読み進める中で、特に印象に残ったのは、
国家が「リスクテイク」の役割を果たすことの重要性です。
民間企業は、短期的な利益を追求しがちであり、
リスクの高い分野への投資を躊躇する傾向があります。
しかし、
国家は、未来を見据えてリスクを負い、
新たな産業を創出する役割を担うことで、
経済全体の成長に貢献できるのです。